川﨑星輝主演『火の顔』を見て

 ジャニーズJr.少年忍者 川﨑星輝くん主演の『火の顔』吉祥寺シアターで観劇してきました。

数週間たった今もいまいち感想を整理しきれていませんが絶対に忘れたくないなと感じた舞台だったのでつらつら感想などを書き連ねたいと思います。

 

 元々読書は大好きなのに読書感想文は書けないような子どもだったので未だに感情の言語化が苦手で、駄文パラダイスになるかもしれませんがそれでもいいよという心が超広い方は是非お付き合いください。

 

 

 

 

↓ほんへ↓

 

同じ少年忍者の北川拓実くんが以前同じ演目で同じお役を演っていたこともあり、なんとなく”ヤバイ”舞台だということは知っていましたが、考察などは読まずに劇場に向かいました。

 

覚悟はしていたけれどそれ以上に本当に過激で壮絶で、

自分の心臓を爪を立て鷲掴みにされてそのまんま剛速球でキャッチボールされてるみたいな感じでした。

 

クソ分かりづらい説明ですがま~~~とにかくしんどかった。

 

私は精神科医にお墨付きを貰うくらいには感受性が豊かなので(自分で言うのもなんだか変な話ですが)今回の火の顔は本当に見ていて苦しくて、演劇を観て過去一病み散らかした気がします。手は震えるし、涙は出るし、息は浅くなるし、My初日の終演後はしばらく上手く息ができませんでした。

 

ついこの間見たばかりの、星輝くんと同じ少年忍者の織山尚大くんのダンスの舞台『ラストパイ』もなかなか衝撃的で観劇後も引きずりましたが、(あれはダンスの定義はさておき)いちおうダンスなのでまだ冷静に見れたというか、苦しくてたまらなくなることはなかったけど火の顔はダメでした。

 

ちなみに私はとことん性格の悪いエンタメ狂人なので

「この苦しみを他の人にも味わってほしいな!!!一緒に苦しもうぜ!!!!」

と友人やFFを勧誘しまくっていました笑

(興味を示してくれた友人も結局予定が合わず誰も勧誘できませんでしたが…)

 

 

【登場人物ごとの演技とかいろいろ】

  • クルト(星輝)

 姉オルガの彼氏、パウルがクルトの部屋で激揉めするシーンで、パウルヒトラーの写真に唾を吐いた瞬間にクルトが激昂する演技、「うわこいつマジでヤバい関わっちゃいけないやつだ…」感が凄くて最高にゾワゾワしました。ヒトラーを貶されてキレるとか特級呪物すぎる。

 クルトが母親に擦り寄ってる時、自ら母親の手を自分の頭の上に乗せて撫でてもらう動き、母親を抱き寄せる時足を絡ませて「僕のママを取るな!!」みたいな顔(怖い>>>可愛い)してて良かったです。まだまだクルトもばぶちゃんなんだね……

 

  • オルガ(クルトの姉、小林風花さん)

 彼氏のパウルが登場した時に革ジャンを着て口紅を塗りたくるんですが、唇から大幅にはみ出して口紅をぐりぐり塗りたくっているところに背伸びしきれない幼さを感じました。

 今回火の顔で初めて小林風花さんを知りましたが、いい意味でめちゃくちゃ人をぞわっとさせる演技がお上手だな、と思いました。湊かなえ作品の世界線の女性みたい。(伝われ)またどこかで小林さんの演技観たいな…

 

 母親の台詞回しやヒステリーの起こし方、演技の仕方の節々に宝塚時代の名残を感じて、普段から宝塚を見慣れてる私にとってはある意味すごく見やすくてスッと入ってくる感じがありました。するっと入ってくるからこそ没入してしまって病み散らかしたってのもあるのかな~

 

  • 父親

 パウルが一番アホですが父親も大概にアホ。母親に「男ってみんなバカばっかり!」みたいなこと言われてましたが、本当にその通り。家族間で性的な話題も変に隠さずオープンに会話できる家庭だよ~~ってやりたいのか、ヘラヘラしながら娼婦連続殺害事件の話してくるのマジでイラっとした。私も実の父親にあんなことされたらオルガや母親みたいにキレちゃうな…

 

  • パウル(オルガの彼氏、葉山昴さん)

 低俗でバカな男感が全面に出てて絶妙に人を苦笑いさせる力(ぢから)があってよかったです。パンツがヒョウ柄なのもしんどかった^^今っぽい言葉で言い換えるならあれが”やりらふぃー”なのかな

 

 

【シンプルに性癖にぶっ刺さったところ】

  • シンプルに星輝の身体がすごく綺麗でびびった。今回上裸になるということでちゃんと鍛えたらしい。流石にパンイチで出てきたときは呼吸止まった。
  • クルト「俺はお姉ちゃんと粉々になりたい」←良すぎて泣いた
  • 星輝が上裸で銃口を自分の頭に突きつけて、その後自分の口にも銃を突っ込んでいるところ、私は性癖ひねくれまくりヲタクなのでここだけは作品に没頭して感情移入するのを忘れてヲタクマインドで大興奮してしまいました。
  • あとはクルトがパウルの耳元で「俺はもう姉ちゃんとヤってんだよ」と囁くシーン。こちらも性癖ひねくれまくりヲタク(以下略
  • オルガに誘われたときにクルトがオルガの太ももに手を置くのも大変えっちで良かったですね
  • 性癖ひねくれまくりお腐り遊ばせヲタクにとって色々ハッピーセットすぎましたね!!!!!!!!た~~~のし~~~~~~!!!!!!!!全編観ると病むから嫌だけどあそこらへんは何回でも見返したい(最悪)

 

 

【ストーリー、演出】

 原作の小説に忠実、かと思いきやクルトがスマホを使っていたり、オルガから”パパ活”って単語が出てきたり、現代のエッセンスがかなり入っていてよりリアルで生々しい。

これは小説や舞台の中だけの絵空事で現実に起こり得ないことだ、とは思えず怖くなりました。

 

作品のなかで特に印象に残っている場面のうちの一つにクルトの演説があります。

 

死んだ人間は冷たい、もう燃えていないから。熱、炎、これが生物学的原則。お前らが考えてるのとは全然違う。お前らは他人との関係性でしか判断しない。別の見方ができない。自分は他の人間に影響を与えている、だから自分は存在しているんだと考える。そんな考えは、クソだ。クソだクソだクソだ!
いまお前たちに見えているのは、他人だけだ。お前たちは消える。そう。お前たちはいつかどんどん薄くなって、やがて消えてなくなる。自分が誰か、誰が他人かもわからなくなる。お前らは間違えてる。全然違う。関係は切らなくちゃならない。そして一人になるんだ。分断しろ。
バカな奴らから自由になれ、全部閉じ込めろ、外の世界を感じる目と鼻は、もういらない。ただこの手に武器さえあればいい。近づいてくる奴はみんな、怒りに焼かれると思え。口を閉じろ。耳を塞げ。ぶちかませ!!!!!」(翻訳家、大川さんのTwitterより引用)


感想を言語化するのが難しいので保留しますがすごい好きだった。

 

 

【クルトとオルガ、姉弟の対比】

 洋服工場に放火したり肉親をなかなか惨いやり方で殺しちゃうようなイカれた姉弟ですが他人事と思えないというか、ここまで激しくなくとも私も成長の過程でクルトやオルガと同じことを感じてきたからこそ本当に怖かった。

 

 2人とも大人(親)に対して異常なまでの嫌悪感を抱いています。とにかく精神的にも肉体的(二次性徴、月経、性行為)にも変わる(=大人になる)のが怖い、嫌だ、と発言しています。

 特にオルガは二次性徴を経て自分の身体が大人になることに対し性的な嫌悪感が激しく母親が避妊や性行為の話を持ち出し「あんたはもう大人の女なんだから」と話しかけるとオルガは「やめてよそういう話マジで無理」と反発します。(←これめっちゃわかるな~~と思いました。私もこういう話親とするの気まずいを超えてめちゃくちゃ嫌だった…)

でもそのくせやけに生き急いで大人になりたがり、クルトの精通を手助けしたり、パウルと積極的にヤるような描写もあります。オルガは自分の心と体が噛み合っていない、みたいなことを言ってたんですがこれもうわ~~~~わかる~~~ってなりました。

 

 クルトは生まれた時に戻りたい、と胎内回帰願望が強いのに対し、

オルガは「もう最悪の時期は抜け出してる。そう、全部終わったことだ」と幼少期を思い出すことすら嫌がってどちらかといえば子どもの期間を抜け出したその先に目を向けています。

過去に向かって生きるクルトと未来(?)に向かって生きるオルガ、同じ意識を持っているように見える姉弟のこの対比は面白いなと感じました。

 

 この姉弟の関係、私は女きょうだいしかいないのでなんとも言えないんですが実際に男きょうだいがいる女性はもっと解像度高かったり胸糞悪いというかぞわっとしたりするんですかね。こればっかりは転生するくらいしか知る方法がないので当事者が見た感情を知ってみたいです。気になる。

 

 

【爆弾と家庭崩壊の作り方】

 火に魅せられ爆弾作りにハマるクルトは爆弾を作る際のポイントとして

「爆発力を強くしたいなら密封しなきゃいけない」

と繰り返します。

この言葉と家庭が崩壊していく様子が重なるなと感じました。

 クルトはある日学校で爆弾を使って退学させられて外との繋がりがなくなってしまいます。さらにオルガの彼氏、パウルも家から追い出したことでさらに外界から隔絶されますが、クルトの炎は鎮まることなく密閉された家の中で強さを増して渦巻きます。その結果”爆発力”が強くなりあんな結末になったんだろうな

 

【カテコについて】

 最後カテコで完全にクルトが抜けて”川﨑星輝”に戻っているのが凄くて驚きました。

プライベートでもお役を引きずるタイプ、と聞いていて「こんな壮絶なお役引きずったら大惨事じゃね?」と思っていたのでそこは安心しました。でも同時に怖かったな。いくら演技とはいえあんなサクッと変わるものなんだ。役者さんってそういうもの?

そういう意味でも星輝は”役者”だなと感じました。

 

 My初日、他のお客さんはクルトが抜けてちょっとぽやぽやなほちきの話をにこにこ笑いながら聞いてたけど私はそこでにこにこできないくらい精神をやられていましたね…だから尚更サクっと切り替えてる星輝が怖くてそっちの意味でもぞわっとした。

 

 最後クルトがマッチに火をつけて、そのマッチを下に落として終わります(勿論燃えたまま)。その後星輝がお辞儀してカテコが始まるんだけど、

 

最後捌ける時に拾って後ろ向いてフッと火を消して捌けていく。

 

これがすごく良かった。火を拾って消すまでの一瞬だけ後ろ姿がクルトに”戻って”いるような気がした。

 

 

 そういえば興行の現実的なところでいうと、あの劇場消防法とかそういう系大丈夫なんだろうか。

”マッチ1本火事の元”と言いますし普通に火事起こってもおかしくないので地味に気になるところではあります。(流石にあの家の廊下の役割を果たしている部分の舞台装置の床は防火素材を使っているんでしょうけどそれにしても舞台で実際に何回もマッチで火つけるってなかなか攻めてますよね)

 

 

 

は~~~~~~~書く前から知ってたけど本当にまとまらない。笑

 

まだまだ考えていることや言及したいことが山ほどあって全く書き終わらなくてこのままだとまたお蔵入りになりそうだったので一旦公開しますが今後も適宜編集しつつ書き足すと思います。

 

2023年4月、18歳の川﨑星輝という少年が演じたクルトという人間、『火の顔』という舞台、そしてそれを見て自分が感じたこと、考えたこと、全部大切にしたいし忘れたくない、そう思うことができる最高のエンタメでした。

 

拙い言葉ではありますがここに『火の顔』のすべてに心からの賛辞を捧げます。

 

                            2023年5月 お酢